強みを活かした生活を送っていくことのすゝめ

強みを活かした生活を送っていくことのすゝめ

2022/3/20

枕にかえて

どうも、えんどう @ryosuke_endo です。
「好きなことで生きていく」「好きなことをやって生きていく」なんてことが承認欲求に屈した人間たちがソーシャルメディア上で唱えるようになってから何年が経過したことだろう。
過去、そんな自己啓発本が大好きで自己成長とはどこまで行ってもできるもので、努力すればなんでも実現できるものだと勘違いし、「根拠のない自信」ではなく「無根拠が過ぎる自信」を胸に大失敗をしてきた僕もその一員だった
当時は本当に勘違いしていたし、何なら妻さんはそんな僕をみて「常に高みを目指している」という点を過大評価した上に結婚までしてしまった。2009年頃の話だろうか。違うな。2011年とかそのぐらいだろうか。よくわからない。
当時を振り返りつつ、いま改めて妻さんに問うと「なんと自分が愚かだったのか気づいた」と素晴らしい評価をいただいており、そのようなすばらしい表現をしてくださっていることは本当にありがたい限りである。
いま考えてみてもおかしな点はいくつもあるのだが、いまと変わらないことは「やることの方向性自体がどうもおかしい」だろうこと。自覚しているのだが他人からもそう評価されているという点において、実感と他者評価を踏まえての冷静な自己分析だといえる。
努力はすべてを平等にはしてくれないし、希望や夢などといった甘言を実現する隙を与えることもない。さらにいうならば、努力ですら個人の遺伝的な特性に左右されるものであると科学的に実証されてきた事実は、あまりにも残酷で虚無感を抱くのに十分なものだった。
そんな僕でも、それなりに満足した人生を歩めているので日本はいい国なのだろうと思う。
それをつくっているのは、”強み”を自己認識することと、それを活かした人生設計をすることで、それらを果たすことで心理的なwell-being(満たされた状態)を獲得するのに大きく貢献してくれることを紹介していきたい。

▶︎ “強み”は心理的なWell-Beingに貢献する

駒沢と石村が2016年に出した論文『強みと心理的ウェルビーイングとの関連の検討』では、強みの自覚に焦点を当て、その自覚数とウェルビーイングとの関連を検討しつつ、”強み”の側面である「パフォーマンスの高さ」と「活力感」、「意味づけ」のどれが自覚に貢献しているのかを詳細検討している。
これによると強みを自覚していることは主観的、心理的なウェルビーイングに貢献できることと、”強み”がもつ側面の中でも「パフォーマンス」がウェルビーイングと強く関連していることがわかった。
パフォーマンスとはよく耳にすることばだが、スポーツ科学の観点から綿引が「ドイツ・ライプツィヒ学派トレーニング科学の成立過程に関する研究(3)」の中で『トレーニング論からの引用』しつつ紹介しているのが以下だ。
「スポーツパフォーマンスの定義:社会規範によって測定・評価される,スポーツの行為や複雑な行為系列の遂行と結果の統一体である。」
これはスポーツに限らず、他の一般的な生活や業務にも応用できると考えられないだろうか。
『日常生活や業務遂行における課題や問題に対峙する過程と結果を包括的に評価したもの』がパフォーマンスだとした場合、強みを自覚した事柄に合致する何かしらをあてがうことでパフォーマンスは向上し、人は主観的・心理的なwell-beingを得ることができるといえるだろう。
ちなみにwell-beingとはWHOの『WHO憲章』に記載されている一文に出てくる表現で、以下のように訳されている。
Health is a state of complete physical, mental and social well-being and not merely the absence of disease or infirmity. 健康とは、病気ではないとか、弱っていないということではなく、肉体的にも、精神的にも、そして社会的にも、すべてが 満たされた状態(well-being)にあることをいいます。(日本WHO協会仮訳)
つまり、肉体的、精神的、社会的にもすべて満たされた状態が健康であることをWHOは人が目指すべき健康的な状態とは何かを定めており、それらを実現するためにも「”強み”の自覚」と「”強み”の発揮できる/したパフォーマンス」は有効な手立てになり得ることを示唆している。

▷ パフォーマンスに貢献してくれる”強み”

強みがパフォーマンスに貢献してくれるとはどういう状態なのか。
それは自らが自覚している”強み”を活かすことで取り組む以前から自信を持った状態で望めるだけでなく、良好な結果に向けた肯定的な予想を抱くことができるため、より良好で前向きな過程や結果に結びつきやすくなるということだ
誰しも、自分が得意とすることや過去に取り組んだことがあり成果が出ていること、成果までは出ていなかったとしても経験があることに関しては悲観的な感情やnegative feed forwardが起こりづらく、効率的な行為や過程の運用が可能であることは経験があるだろう。
feed forword予測制御と訳されるものだが、feed buckが事後に制御体系に指示を与えて軌道修正や方針の修正を行うことの反意語で、事前に適切な制御体系に指示を与えることでfeed buckを不要にすることをいう。
前向きな(positive)感情がより大胆に、かつ積極的な行為や活動を引き起こすため、ドンドンと華麗に、効率的になっていくことが可能になっていく。
これを可能とするのが”強み”の自覚、もしくは”強みの把握であり、まずは自覚をすることが強みを発揮する上での前提条件といえる。
前提が抜けた状態では何も行うことはできない。人が「走る」うえでの前提条件は「歩く」ことであり、歩くことの前提は「立つこと」が必要だ。立つことの前提は「姿勢を維持すること」や「脚部の筋力が構築できること」などが入ってくる。
赤ん坊が自身の手に入ってきたものを把握するのは、その後のつかまり立ちや食べることにつながっていく。
それと一緒で、強みを発揮するにも自覚することが必要であり、自覚した強みがあるからこそpositive feed forwordが実現するのだ。

▷ “強み”は自覚をすることが困難でもある

ただ、強みを自覚することは決して容易ではないが、これがなぜなのかを把握できれば、我々は”より豊かに生活”ができそうなものなのに、どうしてしづらいのだろう。
それは強みに対する向き合い方が極端に狭いからではないか。
実際、上で紹介している論文の中でも駒沢は「個人の秀でた点や長所,つまりパフォーマンスの側面にのみに着目されがちであるためであると考えることができる。」と指摘している。
たしかに我々は”強み”とことばにすると「他人よりも秀でていなければならない」と考えがちで、他人よりも秀でていることが前提のような認識を得てしまっているようにも思える。
しかし、それは誤解だろう。そもそも我々の能力値に大した違いなどない。
100mの世界記録はウサイン・ボルトが2009年の世界陸上で叩き出した9秒58だが、中学生で絶対評価における評価が5段階中3だった生徒が本気で100mを走ったとしても20秒はかからないはずで、ウサイン・ボルトとの間に2倍も差があるわけではない。
2倍の差がなければ誰でも世界陸上で1位を取れるわけではないし、100mを9秒台でそうは出来るようになるというつもりもない。
10秒を超えるためには遺伝的な特性を備えていることや後天的な条件が重ならなければ無理だが、強いていえばそれだけの問題であり能力の差ではない。
また、本人がどう思えるかどうかは他人の評価や能力などまったく関係のない話であるし、いくらタイムが遅かったとしても当人が100mを走ることに心理的な敷居を感じず、前向きに取り組めるのであれば、それは立派な強みだといえる。
つまり、過程と結果の統一体であるパフォーマンスにだけ目を向けるのではなく、「得意」や「取り組むことへの心理的な抵抗がない(もしくは極端に少ない)」を踏まえて”強み”と認識・自覚かすることで本人の意識を拡張させることで取り組む心理的な状態を高めるのだ。

▷ 自覚をするからこそ発揮できる”強み”

これまで書いてきたように、心理的なwell-beingを獲得するためには”強み”を自覚すればするほどに高くなることが期待できることがわかった。
同時に、その強みを自覚する上で明確に自覚できるのが何かしらの課題や問題に取り組む過程や結果の統一体としてのパフォーマンスであることも把握できた。
パフォーマンスへ対峙するにあたり強みと自覚するためには他人よりも優れていると思わなければならないような誤解があったものの、他人と比較することで優劣を競うような形ではなく、自身の心理的な敷居の有無やその過程への前向きな感情があるのであれば、それも強みとして認識していいのだということも理解できた。
改めて、我々は自分が保有している強みが何であるのかを明確に把握すればするほどに生活や人生を豊かにできそうであることもわかった。
たとえ仮に明確にできなかったとしても、取り組む上で他人よりも優れている必要はなく本人の主観によって”強み”と自覚することはできそうだということも明白になった。
これらの点を前提にしつつ、より多くの人たちが何にも活躍できない分野でヒィヒィいいつつ怯えながら生活するのではなく、勘違いでもいいし他人からみればどう見たって根拠のない自信だと思われたとしても”強み”を自覚することが大事なのではないかと思う次第である。
僕のような無能がのさばるような状態は、結果的に国を没落することになるだろうが、同時に、有能な人たちが活躍できて養分として吸い上げてくれることがやりやすくなるような時代になることを祈願する。
どうか、僕をすくい上げ続けてほしい。お願いだ。
ではでは。
えんどう

▶︎ おまけ

▷ 紹介したいnote

well-beingを考える時間など設けている人は決して多くはないだろう。日本人の平均賃金は30年も横ばいだし、そのクセに生産性が上がってないって怒られては昭和世代からは「もっと自分たちを楽にさせるために働いてたくさん納税しろ」と詰められるのだから、考えている時間などない。

強みから逃れると表現することに少し面を食らった。悪い意味ではない。そうやって向き合うことを避けてきたこともあるだろうが、少なくともキャリアメンターや転職相談に乗っていると、あまりにも自身の強みを誤解というかまったく気づけていない人が多い。自己肯定感が低いことも影響していそうである。

強みを成果や過程の統一体であるパフォーマンスのみに特化できる組織はうまくいきそうだ。反面、そうではなく上記してきたような拡張した強みで相乗効果を生み出すことは可能なのだろうか。正直わからない。なぜなら、上記したのは個人の人生戦略であり、組織単位での話は度外視している。無論、無関係ではないだろうが、そんな論文等を見つけたらシェアしていく。
強み + 弱み=依存、強み × 強み=高め合う|西山奈美|note強み + 弱み=依存、強み × 強み=高め合う|西山奈美|noteチームビルディングに取り組んでいる中で、 大きな成果を出す組織 の特徴について、考えます。 わたしが尊敬する経営者のひとりが、株式会社シーマネジメント代表の 権藤優希さん です。(詳細は、本ブログの下記に記載しています。) 先日イベントに参加したときに、権藤さんがおっしゃっていたのは "バディシップ" についてでした。 事業立ち上げに際して、 推進力や突破力が人一倍強いあるリーダーとバディシップを組むと決めたとき、権藤さんは 作業に徹することや 俯瞰して全体を見ること で貢献すると決めたそうです。 ・強み + 弱み = 補う、依存・強み × 強み = 高め合う たった3分ほどのスピーチでしたが、 確信の詰まったメッセージ に心打たれました。 仕事において 「なんでこんなこともできないんだ...」 って人に対して思ったことはありますか? それはその人の能力が低いのではなく、 あなた自身がそれに関する能力が高い、つまりはあなたの 長所・強み なのです。 その考え方をベースにすると、 互いの強みを生かし合う ことができると思います。 人と仕事をするときに大切なこと、それは 依存心があってはならない ということです。 ーゲーテ(ドイツの詩人)の格言ー自分ひとりで石を持ち上げる気がなかったら、ふたりがかりでも持ち上がらない。 人は複数人いると 「誰かがやってくれるだろう」「自分くらいは手を抜いても大丈夫だろう」 と甘えが出てしまう生き物です。 ですが、その状態では、どれだけ人数が増えても 機能しない でしょう。 チームで最大限の成果を作り出そうと思ったら、一人ひとりが 責任感を持つことが重要です。 「誰がやらなくても自分がやる!」 と思ってやるからこそ、はじめて100%の力が発揮されます。 人間関係や リーダーシップには、 正解がない からこそ奥が深く、面白いなと日々感じています。 「人は人で磨かれる」 と教わってきました。 アナログなコミュニケーションを通して、自分自身の 魅力 を上げていきます。 ▼経歴 福岡県久留米市生まれ。日本電気株式会社(NEC)入社。ソーシャルビジネスコミュニティ『ワクセル』のメンバーとして学び、4年で独立。「達成をもって、人々の可能性へ貢献」を企業理念とし、 メインとなるビジネスコンサルティング事業をはじめ、オーガニックショップの経営やオンラインサロン開設、出版など活躍の幅を広げながら全ての事業で業績を伸ばし続けている。 ▼対談 ・坂東工さん(恋愛リアリティ番組『バチェラー・ジャパン』司会進行役) ・MBさん(メンズファッションバイヤー) ▼オンラインサロン オンラインサロン『ごん×櫻井のモテモテ塾』を運営。YouTubeでは、仕事術、恋愛、ファッション講座、著名人との対談など幅広いテーマで動画を配信している。 ▼出版 ・『自分で決める。DECISION MAKING』 ・『心が強い人のシンプルな思考法則。BE STRONG』 ・『「話すのが苦手、でも人に好かれたい」と思ったら読む本』 ・『損をしない人の考え方』 note.com

▷ 本noteに関連する紹介したい書籍

科学的に、とは他人をつめるための道具に利用するのではなく、自分なりに前提を揃えることの材料を整えることを指すと僕は考えている。結論だけを述べて横流しするだけでは何にもならない。結論に至った過程を自分なりに導き出す上での材料として科学を用いるのだ。って意味で有用な書籍。

▷ 著者のTwitterアカウント

僕の主な生息SNSはTwitterで、日々、意識ひくい系の投稿を繰り返している。気になる人はぜひ以下から覗いてみて欲しい。何ならフォローしてくれると毎日書いているnoteの更新情報をお届けする。

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